遠いところ
2023年6月9日、沖縄先行公開

配給作品

遠いところ
2023年6月9日、沖縄先行公開

『遠いところ』は工藤将亮(くどうまさあき)監督長編3作目となる沖縄の若年層を描いた実話に基づいた物語です。
構想3年、独自で沖縄を取材し、繁華街に集まる若者から生活困窮者の支援団体まで徹底した取材を重ね撮影を敢行しました。
映画のリアリティを重視するという制作チームの強い想いから、主な出演者は敢えて新人もしくはデビュー間もない俳優をオーディションで選ぶというキャスティングも本作を際立たせている特徴の一つです。



◎工藤将亮監督による制作意図~撮影時に関係者に配布されたステイトメント
近年沖縄ではシングルマザーや若年母子などの貧困が深刻化していて、そうした貧困層の少女たちを題材にしたルポルタージュが多くあります。
それらの作品では少女たちが家族や恋人たちの暴力に晒され、その暴力から逃げ、自分たちの居場所を作りあげていく姿が描かれています。
ぼくが一番興味を惹かれたのが、作者たちの“視座”です。
作者たちは少女たちを診断したり、矯正したりはしません。ただ寄り添い、話を聞く。そうすることで依存と自立のはざまで苦しむ少女たちの願いや心が見えて来ます。
これらは映画のモチーフになりうると思いました。

経済的自立は、心の自立を意味しません。貧困は物質的貧しさよりも、心について語られるべきだと思います。
親元を離れ社会に出ると言ってもスマホ一台で足りてしまう時代に、彼女たちが直面する自立とは、いかに発露し自分の居場所を見つけるかという困難な問題なのです。

映画化にあたり実際にぼくたち自身がフィールドワークを行い、独自のモチーフを探す必要があります。
実在する少女たちを俳優が演じる以上はモチーフとなる少女たちの声を俳優たちが直接聞く必要があります。その理由として、俳優が脚本の文字だけを頼りに想像することはこの映画の性質上良くないと思ったからです。ゆえに映画制作は私たちスタッフ・キャストが直接話すことのできる少女たちを探すところから始めなければなりません。
映画の主人公は家族や恋人の暴力に晒されています。周りにはそれを助けてくれる環境もない。彼女にはその暴力から逃げだし、そして居場所を見つけるという目的が生まれる。
彼女がそれら無慈悲な暴力から逃げるとき、強い気持ちを持ちつつも前よりもずっと地面を踏みしめる足が軽く、そして自由だと感じる___。
映画のラストをそんな風にできたらと思っています。
女性差別や暴力が激しい時代にわたしを育ててくれた母親と祖母に捧げる映画です。



<工藤将亮監督(くどうまさあき)コメント>
いま日本の若者は危機に直面しています。大人たちは自分勝手に振る舞い、自己のために若者の未来を踏みにじっています。日本のメディアが報じる沖縄は連日基地問題のことや防衛のことばかりで、子供の貧困について語られることは多くはありません。
国や政府は防衛費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)には糸目を付けませんが、シングルマザーたち(若年母子の家庭)には支援や保護は考えていないかのようです。そんなクソッタレな現状に映画で反抗できることはないかと制作したのが本作です。
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭から招待を受け大変光栄です。沖縄で撮影した本作が世界の人々にどう受け止められるか、日本で生きる若者の叫びをどう感じてもらえるか、楽しみにしています。



<花瀬琴音(はなせことね)コメント>
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭にて「遠いところ」の上映が決まったと連絡を受け、とっても嬉しかったです。沢山の素敵な作品が集まる歴史ある映画祭に呼んでいただき光栄です。ありがとうございます。
「遠いところ」では私のこれまでと、この先の人生と、本作に出てくるアオイのような行き場のない若者たちの未来を背負って、魂を込めて演じさせていただきました。
工藤組一丸となり奮闘し、向き合い、作り上げた作品です。
そのような環境を頂いた、関係者の皆様へ感謝の気持ちでいっぱいです。
1人でも多くの方にお届けしたい作品です。

【スタッフ】
監督/脚本:工藤 将亮

【キャスト】
花瀬 琴音、石田 夢実、佐久間 祥朗、長谷川 月起 /松岡 依都美 小倉 綾乃、NENE、奥平 紫乃、髙橋 雄祐、カトウ シンスケ、中島 歩、岩谷 健司、岩永 洋昭、米本 学仁、浜田信也、尚玄、上地 春奈、きゃん ひとみ 早織、宇野 祥平、池田 成志、吉田 妙子 他

【ストーリー】

 沖縄県沖縄市-胡坐(コザ)。
17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾(ケンゴ)と3人で暮らしている。おばあに健吾を預け、友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイ。マサヤは仕事を辞め、アオイへの暴力は日に日に酷くなっていく。キャバクラで働けなくなったアオイは、マサヤに僅かな貯金も奪われ、仕方なく義母の由紀恵(ユキエ)の家で暮らし始める。生活のために仕事を探すアオイだったが、そこには一筋縄ではいかない現実があった。